2022年12月、ドローンの法整備が進められる中、ついに国家資格制度が始まりました。
今後は、さまざまなシーンでドローンの利活用が増えていくことが想定され、ドローンを通じた産業の振興も大いに期待されています。
屋外でドローンを飛ばす際には、国土交通省の定めるルールを理解し、守る必要があります。
しかし、内容を正確に把握しようと公式ホームページや公的資料などを見ても、複雑で読めば読むほどに混乱してしまい、頭を悩ませている方も少なくないでしょう。
この記事では、ドローンの登録制度や飛行許可申請、国家資格制度についてのガイドラインを、国土交通省から提示されている最新の情報に基づいてわかりやすく解説します。
- 機体の重量100g以上のドローンは登録が必要
- ドローンを飛行させる場所と方法によって許可申請が必要
- ドローンの国家資格制度の概要
無人航空機(ドローン)の登録制度とは
2022年6月20日から無人航空機(ドローン)の登録制度が開始しました。
2020年の改正航空法に基づいたもので、100g以上のドローンが対象となり、登録していないドローンは原則として屋外での飛行が禁止されています。
ドローンの登録制度では、2つのことが義務化されました。
ひとつは「機体情報と所有者・使用者情報を登録すること」です。
機体情報としては「種類、製造者、型式、製造番号等」の登録、所有者・使用者情報としては「氏名、住所等」の登録が必要です。
登録していない100g以上のドローンを屋外で飛行させた場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則規定も設定されています。
もうひとつは「機体に登記記号を表示すること」です。
機体の登録申請が認められると、国土交通大臣から12桁の登録記号が発行されます。
飛行時にはこの登録記号を機体に表示させ、同時にリモートID機能を備えなければなりません。
リモートIDとは、登録された情報を発信する機器のことで、全てのドローンへの搭載が義務づけられています。
また、登録は3年ごとの更新が必要で、変更や抹消があった場合も国土交通省への届出が必要とされています。
無人航空機(ドローン)の飛行許可申請とは
ドローンを飛ばす際は、飛行許可申請が必要な場合と、無許可でも飛行できる場合があります。
航空法により定められた「特定飛行」にあたる場合には、国土交通大臣による飛行許可または承認が必要です。
特定飛行に該当するのかどうかは、飛行する「場所(空域)」と「方法」によってルールが決められています。
特定飛行を行う場合は、事前に飛行許可・承認の申請が必要とされており、取得せずに飛行すると懲役または罰金の対象になります。
飛行許可申請の概要
下記のような飛行禁止区域の上空でドローンを飛ばす際には、国土交通省への飛行許可申請が必要です。
- 空港等の周辺
- 人口集中地区(DID地区)の上空
- 高さ150m以上の上空
- 緊急用務空域(事故や災害時に一時的に指定される空域)
飛行禁止区域の上空での飛行は特定飛行に該当するため、事前に国土交通大臣の飛行許可を申請しなければなりません。
ただし、100g未満のドローンでは、人口集中地区(DID地区)の飛行許可は不要です。
飛行の方法によっても特定飛行となる場合があります。
以下のような方法でドローンを飛行させる場合は、国土交通省へ飛行承認の申請が必要です。
- 夜間の飛行
- 目視外での飛行
- 人や物件と距離が30m未満の飛行
- イベント上空の飛行
- 危険物の搬送
- 物件の投下
飛行許可または承認の申請が必要かどうかは、下記のフローチャートによって判断できます。
必要な許可を取らずにドローンを飛行させると、罰金などの対象になってしまいますので、必ず申請しましょう。
飛行許可申請の方法
特定飛行を行う場合の許可・承認の手続きは、オンラインサービス「ドローン情報基盤システム(DIPS)」で行います。
郵送や窓口に持参して申請書を提出することも可能ですが、国土交通省では原則としてオンラインにより提出することを推奨しています。
DIPSを使った飛行の許可・承認を取得するまでの流れは以下の通りです。
DIPS2.0のアカウントからログインし、飛行させるドローンの情報と操縦者の情報を登録します。
飛行の目的や日時、経路及び高度、安全管理のための措置等を入力し、申請します。
提出された申請書は、地方航空局や空港事務所などで審査が行われます。
審査が完了すると許可書または承認書が発行されます。
電子または書面での発行が可能です。
書面での発行を希望する場合は、申請書の提出先へ切手を貼付した返信用封筒を郵送すると、許可書または承認書が郵送されます。
書面を窓口で受け取ることも可能です。
飛行前に飛行計画を通報し、飛行直前には飛行日誌を作成します。
飛行後には飛行記録も作成する必要があります。
以上が大まかな流れです。
特定飛行の許可・承認申請は、ドローンの国家資格や民間資格を持っていれば、一部が簡略化されたり省略できるケースもあります。
ドローンの国家資格制度が開始
2022年12月から、ドローンの国家資格にあたる「無人航空機操縦士」のライセンス制度がスタートしました。
従来はドローンの資格といえば民間資格のみでしたが、国家資格が加わったことでドローン業界は脚光を浴び、ドローンの活用範囲は大きく広がりを見せています。
ここでは、ドローンの国家資格の概要と、資格の種類とその違いについて解説します。
ドローンの国家資格概要
現時点においては、ドローンを飛ばす際に国家資格が必ずしも必要というわけではありません。
国家資格がなくても、事前に申請して許可・承認を得れば、ほとんどの特定飛行は可能となりますが、手続きは複雑で時間も労力もかかります。
国家資格を取得することで、一定以上のスキルや知識を身につけていることが証明されるため、手続きの一部が申請不要となったり、審査の簡略化が可能です。
本来は申請が必要な特定飛行のうち、国家資格の取得により申請が「不要」となる飛行は、次の4種類です。
- 人口集中地区の飛行
- 人や物件との距離が30m未満の飛行
- 夜間の飛行
- 目視外での飛行
また、申請時の審査が「簡略化」されるのは次の6種類です。
- 空港等の周辺
- 高さ150m以上の上空
- イベント上空の飛行
- 危険物の搬送
- 物件の投下
- 機体の重量25kg以上での飛行
国家資格を取得すると、飛行許可申請の一部を省略または簡略化できるため、様々な分野でドローンの活用が容易になり、利活用できる機会が広がります。
特にビジネスにおいては、国家資格の取得により対外的な信頼性が高まり、ドローンの仕事が獲得しやすくなるというメリットがあります。
一等資格と二等資格
ドローンの国家資格には、一等資格(一等無人航空機操縦士)と二等資格(二等無人航空機操縦士)の2種類があります。
一等資格は、よりハイレベルな技術と知識を必要とするため、難易度の高い資格と言えるでしょう。
いずれの資格も、取得するには学科試験、実地試験、身体検査を受ける必要があります。
ただし、登録講習機関に認定されているドローンスクールで受講し修了すると、実地試験が免除されます。
一等資格と二等資格の違いとは
一等資格が二等資格と違うところは、カテゴリーⅢ飛行を含む全ての飛行が可能であるということです。
国土交通省によって定められているドローンの飛行カテゴリーは、リスクのレベルによってカテゴリーⅠからカテゴリーⅢまで次のように分類されています。
- カテゴリーⅠ飛行:特定飛行に該当しない飛行(許可申請は不要)
- カテゴリーⅡ飛行:立入管理措置を講じた上で行う特定飛行
- カテゴリーⅢ飛行:立入管理措置を講じないで行う特定飛行
2022年12月5日から国家資格制度が開始されたことにより、一等資格を取得している場合のみ、従来は禁止されていたカテゴリーⅢ飛行が可能になりました。
立入管理措置とは、ドローンの飛行に無関係な第三者の立ち入りを規制することで、カテゴリーⅡとカテゴリーⅢの違いは、立入管理措置を講じるか講じないかという点です。
二等資格ではカテゴリーⅡ飛行は可能ですが、カテゴリーⅢ飛行はできないため、特定飛行を行う場合は必ず立入管理措置が必要です。
一等資格の取得により、立入管理措置を講じなくても特定飛行ができるようになり「有人地帯(第3者上空)での補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)」が可能になります。
つまり、一等資格を取得すると「人がいるエリアの上空で特定飛行を行うこと」が可能になるということです。
ただし、一等資格の保持者でも、カテゴリーⅢ飛行を行う場合の許可・承認申請は必要です。
まとめ
2022年6月から、それまで機体重量200g以上が対象だった登録制度が、100g以上で義務化され、ほとんどのドローンが登録の対象となりました。
また、ドローンを飛ばす場所と飛行方法によって特定飛行に該当する場合は、事前に飛行許可・承認の申請が必要です。
2022年12月からは、ドローンの国家資格制度が本格的にスタートしました。
ドローンに関するルールや制度は、この数年で目まぐるしく変化しており「知らなかった」では済まされないことも多くなってきています。
国土交通省が定めるルールをしっかり守り、安心・安全にドローンを運用していきましょう。
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